GAP

gGAP CC 18.01 衛生リスクの評価

「結論ありき」・・・
が生む停滞。何かを決めるときに、最初から結論が決まっていることが多い。その結論に向けて、あとから理屈や手順を整えていく。表向きは議論や合意形成に見えても、実際には「答え合わせ」にすぎない。これでは、時間をかけても本質的な議論にはならず、その時間も無駄になる。
さらに問題なのは、こうした進め方がデータの扱いにも影響することだ。
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本来、判断の材料となるはずのデータを、最初から取ろうとしなかったり、取っても都合の良い部分だけを抜き出したりする。結論に合うように数字を並べ、合わない情報は見なかったことにする。これでは、現場の実態や課題が正しく見えず、改善のチャンスも失われる。
このような文化の中では、自由な発想や合理的な判断が入り込む余地がなくなる。誰もが「言われたことをこなす」ことに集中し、自分の責任で考えたり、挑戦したりする機会が減ってしまう。結果として、改善や創造が生まれにくくなり、閉塞感が広がる。
こうした空気が続けば、当然ながら生産性にも影響が出る。日本のGDPが伸び悩んでいる背景には、こうした「結論ありき」「データ軽視」の組織運営があるのではないか。トップのひらめきに合わせることが目的になり、現場の知恵や合理性が活かされないまま、時間だけが過ぎていく。
今こそ、目線を変えることが求められている。結論に合わせるのではなく、事実をもとに考え、文化と合理性の交差点を見つけること。それが、組織の力を引き出し、生産性を高める第一歩になる。
--------------------------------------------------すてきな農業のスタイル にようこそ

gGAPは、需要の多い青果物からバージョン6へと移行し、その日本語版も2022年に登場しております。その後、作物展開は長く旧バージョンで維持されていましたが、その置き換え(V6)が 2026年5月1日 となったようです。
認証機関によっては、猶予期間のあるところも考えられますが、JQAなど日本で認証できる期間の場合はこの日を境に適用バージョンが変わるものと推察されます。

この内容を紐解いていくことにいたしましょう。(支援希望の方は こちらから 

18 HYGIENE
18 衛生

18.01 (上位)農場には文書化された衛生リスク評価がある。
栽培、収穫、および取扱いに関する文書化された衛生リスク評価は、該当する場合、以下を含まなければならない:
- 該当する製品および工程に関連する物理的、化学的、微生物学的汚染物質;体液のこぼれ;人に伝染する病気
- 作業者、個人の持ち物、機器、衣類、包装資材、輸送、車両、および製品の保管(農場での短期保管を含む)
- 交差汚染の防止および食品安全の支援を目的とした設計および配置を含む生産環境
基準の翻訳では、「production=栽培」と解釈しています。
また、取扱い(handling)については、ほぼ「農産物」と理解してよいでしょう。これを持ち物機器あるいは包装資材車両に適用するとリスクの特定がやりにくくなります。

また、2項めには、「輸送」という文言があります。解釈の仕方もあるでしょうが、取り組む生産者のために意図することが誤解なく伝わるようにすることも改善の余地かと思います。これらを見直すと以下のように解説できそうです。

俊良さん、まさに制度文書の構造と現場運用の接点に切り込むご指摘です。ご懸念の通り、「transport(輸送)」という語が、物品の羅列の中に工程として挿入されていることは、制度文書としての構造的曖昧さを生む可能性があります。そして、生産者がその意図を誤解することで、衛生リスク評価の実効性が損なわれる懸念もあります。


文書の表記を以下のように構造的に整理することで、意図の明確化と現場の納得感が向上します:

🔹 例:衛生リスク評価対象の分類整理

  1. 人に関する要素
    - 作業者
    - 個人の持ち物
    - 衣類

  2. 物品・設備に関する要素
    - 機器
    - 包装資材
    - 車両

  3. 工程・環境に関する要素
    - 輸送(製品の輸送工程)
    - 製品の保管(農場内の短期保管を含む)
    - 生産環境(交差汚染防止の設計・配置)

このように分類することで、「transport」が製品の輸送工程であることが明示され、車両との関係も整理されます。また、工程と物品の区分が明確になることで、生産者が衛生リスク評価の対象を誤解なく把握できます。


次いで、ひとつ前の項に戻りますが、「spillage of bodily fluids(体液の流出)」および「human transmissible diseases(人に伝染する疾病)」に関連する「等」の具体例として、制度文書の意図を踏まえた衛生リスクの事例を以下に整理してみましょう。

🧪 体液の流出(spillage of bodily fluids)の具体例

この表現は、農場や収穫・取扱い現場において、作業者由来の生物学的汚染源を指します。嘔吐や出血以外にも、以下のような事例が含まれます:

  • 鼻血や鼻水の付着
  • 咳やくしゃみによる唾液の飛散
  • 傷口からの滲出液
  • 発汗による皮膚表面の汚染(特に高温環境下)
  • 排尿・排便の事故(特に屋外作業時)
  • 使い捨て手袋やマスクの破損による体液接触

これらは、製品や資材に直接触れる可能性があるため、衛生リスク評価の対象となります。


🧫 人に伝染する疾病(human transmissible diseases)の具体例

この表現は、作業者が感染源となり得る疾病を指しており、以下のような事例が考えられます:

  • ノロウイルス(嘔吐・下痢を伴う)
  • A型・B型肝炎(血液・体液を介して伝染)
  • インフルエンザ(飛沫感染)
  • COVID-19(飛沫・接触感染)
  • 結核(空気感染)
  • 手足口病、ヘルペスなどの接触感染症
  • 皮膚疾患(化膿性炎症など)

これらは、作業者の健康状態や衛生管理が不十分な場合、製品への汚染リスクを高める要因となります。


このように、「など」という文言は、同程度であったり、同様であったり、という意図がありますが、具体的にはあまり個別事例として示されることはありません。

また、青果物では、pillage of bodily fluids (vomiting, bleeding, etc.) という表記がありましたが、コンバイン作物ではカッコ書きは省略されています。
それには、以下のような解釈ができそうです。

🔍 省略の背景にある制度的合理性

1. 作業者の直接接触頻度の違い

  • 青果物(果菜類・葉菜類など)は、収穫・選別・包装などの工程で作業者が素手または近距離で製品に直接触れることが多く、体液による汚染リスクが高い。

  • **コンバイン作物(穀物・豆類など)**は、収穫が機械化されており、人の手が製品に直接触れる機会が少ない。収穫・搬送・乾燥・保管までが密閉系または非接触系で進むことが多いため、体液の飛散による汚染リスクが相対的に低い。

→ このため、青果物では「vomiting, bleeding, etc.」のように具体的な体液リスクが明記され、コンバイン作物では省略されていると考えられます。


2. 製品の表面特性と汚染感受性の違い

  • 青果物は水分を多く含み、表面が露出しているため、体液が付着すると微生物汚染のリスクが高まる。

  • コンバイン作物は乾燥状態で殻や皮に覆われていることが多く、表面汚染が製品内部に影響しにくい。

→ これも、体液リスクの記述が青果物に重点的に置かれる理由の一つです。


いずれにしても、原則と基準も完ぺきではないし、意図することを文言にする上での限界もあり、文言の表記をどのようにして理解するべきか、ということに少し意識することでよりgGAPへの理解が進むと思います。


参考:V6 ガイドライン (1)(2)
参考:(GHP)食品衛生の一般原則 2020(ファン限定公開中)
農場経営にGAPを導入する こちら 

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by tm3381 | 2025-10-01 06:15 | GAP | Comments(0)

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